公会計制度見直しの動向

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決算書作成システムを東京都に続いて岐阜や山形も

日経のサイトに12月1日に出ていた「自治体「決算」、企業並みに――東京都導入、岐阜県など追随」という記事によると、決算書作成システムを導入した東京都に、岐阜、山形県が追随しているという。都は全国で初めて企業会計に準じた決算書作成システムを導入し、19年9月に決算をまとめるが、新システムはこれまでと同様に、お金の出入りを入力するだけで、企業の損益計算書にあたる行政コスト計算書や資産・負債の残高を表すバランスシート(貸借対照表)の作成が可能となっていて、事業別の資産・負債状況も即座にわかり、住民に財政事情を詳しく説明する資料として活用できると記事は紹介している。例えば、約1700カ所ある都営住宅の団地ごとの資産・負債、コストの状況が把握でき、長期的な建て替え計画に反映できるとか。都以外でも岐阜県が19年3月に、企業並みの決算書を短期間で作成する「総合財務会計システム」を稼働させ、山形県もシステムを開発中で、20年度の稼働を目指しているとのこと。市町村では、大分県臼杵市が、小規模な自治体でも迅速に決算書を作成できる簡便なシステムの開発に着手したという。総務省も自治体に企業並みの決算書作成を求めており、2種類のモデルを提示していて、岡山県倉敷市と静岡県浜松市で実証作業中とのこと。来秋をめどにシステムを準備し、ソフトは自治体に無償配布しして、決算書づくりを後押しするという。記事によると、自治体の会計には、福祉や都市整備など基本的な行政サービスを計上する一般会計、介護保険など特定の事業を対象とする特別会計、上下水道、病院、地下鉄など独立採算に近い地方公営企業会計などの区分があるが、各会計は帳簿への記帳方法が異なり、専門家でないと理解は難しく、住民が自治体の実像をつかむうえで、高い障壁になっているとのこと。都や岐阜県の財務会計システムでも特別会計や地方公営企業会計まで連結した決算書は作成できないなど、なお課題を残しているとのこと。
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浜松市の新公会計制度研究会の報告書がまとまったらしい

 11月7日付けの日本経済新聞地方経済面6面の「浜松市の新公会計制度研究会、開示資料の充実提言、監査実施も求める」は、浜松市長の諮問機関である浜松市新公会計制度研究会(座長=小西砂千夫・関西学院大学教授)が6日にまとめた提言について、バランスシートなどの開示資料を充実させるほか、公認会計士による監査未確定債務の推定などを求めたと報じる。浜松市は今年度から21年度までのアクションプログラムを策定し、提言を実施していく方針とか。6日に公表された報告書案では複式簿記を導入したうえで、開示資料としてバランスシートなど4種類の財務諸表の作成を提言しており、中長期の収支に関する財務指標や債務、資産に関する指標の作成も求めたとのこと。財務諸表の作成時には監査しやすいように、作成時の元データを保存する基準を設定し、より正確な情報開示ができる制度を示したとか。職員退職金支払見込み額や外郭団体が持つ土地の含み損などの未確定債務について推定し、毎年度末に公表する必要があるとしているとのこと。平木省財政部長は6日の記者会見で、「基本的には提言項目をすべて受け入れていく」と述べ、提言の実現に積極的な姿勢を示したと記事は伝える。
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浜松市が17年度財務諸表を公表

 9月30日付け日本経済新聞地方経済面6面の「浜松市、大幅見直し、市民向け財政資料――新財務諸表、全国初の導入」の記事は、静岡県浜松市が29日、市民向けに市の財政状況を公表している資料「浜松市の財政のすがた」を大幅に見直したと報じるもの。これまでは市債残高など数値の公表が中心だったが、さまざまな財政指標について他都市との比較や市としての自己評価などを加え、よりわかりやすい内容にし、また、総務省が示す新しいバランスシートなど財務諸表4種類を全国で初めて導入したという。同日に公表した17年度版では財政力指数、公債費比率などの指標について政令指定都市の平均値と比較し、他都市と比べて財政状況が良いのか悪いのかといった自己評価と改善方針について記しているとか。財務諸表についても総務省が示す方式に沿ってバランスシートの項目を改めたほか、市の資産の動きを示す純資産変動計算書などを新たに導入し、施設別の財務諸表も試験的に導入したらしい。
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不納欠損引当金計上を浜松市が提案する方向

 中日新聞サイト静岡版ページは9月25日に「浜松・新公会計制度研究会 『浜松モデル』総務省に提案へ」を掲出して、24日に浜松市役所で開かれた浜松市の新公会計制度研究会の第6回会合で示された報告書の骨子案について、時効で徴収不能となる市税を不納欠損見込み額として計上するなど、従来の公会計にはなかった浜松市独自の方式を取り入れており、全国でも例のない取り組みとして、公会計制度の全国モデルを策定する総務省の研究会に提案すると報じる。記事によると、骨子案には不納欠損見込み額の計上のほか、売却可能資産の時価ベース評価、地方債の利子分を含めた将来負担の算出などを盛り込んでおり、浜松市財政課は「浜松モデルが全国基準になればとの思いがある」と話している。この日、議論された不納欠損見込み額は、民間企業の貸倒引当金に該当するもので、市の17年度末の市税の滞納繰越額約2万9千件、計約54億9400万円について、これまでは債権として全額を資産に計上していたが、実際には時効などで不納欠損が生じており、欠損額の算出方法としては、全体の53%の29億円にのぼる80万円以上の高額債権は、徴収可能性をランク付けし、過去の実績から不納欠損見込率を設定し、80万円以下の債権は事務的な負担を考慮してランク付けはせず、過去5年間の平均不納欠損率を用いて算出するという。実態に即した表示をすることで、財政状況の透明性向上を図るという趣旨らしい。ちなみに、市は一方で滞納徴収にも力を入れており、19年度から国民健康保険料や上下水道料など部局横断的に債権回収にあたる債権回収対策課を設置し、厳しく対応するとしているという。公会計制度については、自治体の財政危機の深刻化によって、より透明性の高い制度の導入が求められ、総務省は全国の自治体が比較可能な財務諸表の作成モデルの研究を開始し、浜松市も今年5月、民間企業の会計手法を取り入れた公会計制度を導入するため研究会を発足させて検討を続けてきていて、研究会は11月6日に、報告書の最終案をまとめるという。

関連:浜松市が検討を開始
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投資家は自治体に公開企業並みの開示を求める

 9月28日付けの日本経済新聞朝刊7面の「開示されない地方債リスク」(金融取材メモ)〔N〕は、財政破綻状態に陥った北海道夕張市など、地方自治体の深刻な財政悪化が進んでおり、自治体の破綻法制づくりに向けた議論が始まったものの、地方債の債務不履行(デフォルト)に備えて情報を開示する法律はなく、法改正も含めた対応策が新たな金融行政の課題として浮上してきたと伝えている。金融庁の関係者は、8月末に総務省が立ち上げた自治体の破綻法制を検討する研究会について、結論次第では「地方債も紙くずになる」との事態になりかねないため、その議論の行方を注視しており、その背景として、今の投資家保護制度は「地方債にデフォルトは起きない」ことを前提としていて、証券取引法にも開示ルールの規定はなく、債券の発行企業には財務内容を定期的に投資家に示す義務があるが、自治体は例外となっており、これは、自治体には課税権限があるうえ、財政破綻をしても国が支援する仕組みがあることが根拠となっていると教示している。地方債市場は変わり、自治体が公募債の発行条件を金融機関と個別に交渉し始めて以来、財政実態に応じた金利格差が発生し始めていて、リスクの引き受け手として投資家の存在感が高まることをにらみ、公開企業並みの開示制度の導入を求める投資家も増えているとか。ただ、開示の義務付けは、開示内容が適切か否かについて、金融庁が自治体を監督する構図が生じ、虚偽記載があった場合は証券取引等監視委員会が自治体を調査することにもなることから、自治体への金融庁の影響力を高めるため、総務省は「干渉は受けない」という立場で、投資家保護という金融庁の論理を、今の霞が関は必ずしも歓迎しないと記事は説明している。
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BS作成市町村は4%

 8月29日付けの日本経済新聞朝刊5面「連結バランスシート、作成の市町村、4%どまり」の記事によると、総務省は28日、16年度決算で貸借対照表(バランスシート)など民間企業並みの財務諸表を作成した地方自治体の数をまとめ、これによると、公営事業会計や第三セクター、地方公社などを連結させたバランスシートの作成率は、市町村(東京23区含む)でわずか4.1%とか。記事は「とどまった」と表現するが、少なくとも短期的には効果が認められないBS作成をするゆとりは市町村にはないと観るべきだろう。都道府県は全47団体が作成しているのは、不特定の金融機関から借金するためにやむを得ないところだ。
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「国の財務書類」が報じられている

 財務省が8月25日に16年度の国の貸借対照表を公表したことについて、日経は8月26日の朝刊で「2004年度、国の債務超過265兆円、郵政公社など特殊法人含む、負債、18兆円増」と題して報道。
 内容は、「一般会計と特別会計に加え、国と関係が深い独立行政法人や特殊法人など226法人を連結すると、負債が資産を265兆円上回る「債務超過」だった」と冒頭に記し、以下、

  • 企業会計と同じ方式で作成

  • 連結ベースの資産は839兆円で15年度より5兆2千億円増加し、負債は1104兆円と17兆9千億円も増え、差し引きの債務超過額は12兆7千億円、約5%増加

  • 約146兆円の業務費用に対して財源(税収など)は約131兆円で、民間企業の最終損益に相当する業務費用と財源の差額は、連結ベースで15兆4千億円の赤字となり、赤字幅は2兆3千億円拡大

  • 一般会計と特別会計だけで算出した場合は、債務超過額が276兆6千億円に膨らむのは、日本郵政公社や日本道路公団が巨額の資産超過だったため

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新地方公会計制度研究会の報告書ができたが……

 総務省は5月18日に「「新地方公会計制度研究会」報告書の公表」をプレスリリース。この研究会は4月5日に第1回を開き、5月8日までの1箇月ほどの間に計5回の会合を開いている。報告書はPDF80ページと大部だが、その大半は、財務書類の作成方法について二つのパターンを記したテクニカルなもので、これは事務方の想定外だったと思われるし、また、8自治体からヒアリングを行っているが、その結果が反映されたとは思えない(質疑は行われているが、質疑内容に基づく議論は見当たらない。次の検討の場で参考にされるのだと思いたい。)報告書になっているなど、とても奇妙なもの。今後、更に検討が行われるようだが、この報告書が今後の検討でどう位置付けられるのか、公会計複式簿記無益論者としても興味津々。
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東京都が新方式を宣伝している

 5月16日付け東京新聞東京版「都の新会計システム 普及へノウハウ伝授」の記事は、15日に都内で開かれた8都県市首脳会議で、石原慎太郎知事がは、4月から国内の自治体で初めて導入した複式簿記などを使った新会計制度を広めるため、各自治体にノウハウを伝授する考えを表明したと報じる。同会議では今後、具体的な効果について検証し、国に対しても普及促進への支援を要望することを確認したとか。自治体の会計は、単年度ごとにお金の出入りだけを記録する「単式簿記」方式がとられているが、これでは負債などの記録が別になり、どれだけ財産と負債を抱えているかという財務内容が的確に把握できないとのこと。都の新会計制度では、資産と負債を一元的に管理する財務諸表をつくり、コスト意識を高める。売却を前提にしない道路、橋などの資産は企業会計にないため、都は独自の資産科目として「インフラ資産」を設けているとか。石原知事は「民間では当然のことが、自治体ではあまりに遅れていた。(都の新会計は)日本のスタンダードになりえる。経営の視点から、本来は国が率先して導入をするべきものだ」と強調したとの由。
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浜松市が検討を開始

 静岡新聞サイトが5月16日に掲出した「企業会計の反映方法課題 浜松市の新公会計」によると、浜松市は15日、同市役所で「新公会計制度研究会」(座長・小西砂千夫関西学院大教授)の初会合を開いたとのこと。自治体の会計に民間企業のコスト・資産・負債管理の手法を導入するのが目的で、県内では先進的な取り組みとのこと。今後は民間の手法をどう公会計に反映し、開示改善を図るかや反映事業の範囲、債務の分析―などが課題となるとか。地方自治法に基づく単式簿記方式の公会計では資産や負債管理に事実上限界があることから、浜松市は行財政改革の観点からもあえて新しいバランスシート(貸借対照表)をつくり、中長期的に持続可能な財政運営に生かす考えで、自治体財政の専門家や監査法人、公認会計士、地元企業スズキの代表からは「市の対照表は肝心な注記が足りないし何を分かってほしいのか明確でない」「行財政用語が市民には分からない」「信頼できる正確な数値なのかこそ問題」など、率直な意見が相次いだとか。小西座長は自治体の借金は地方債のような確定債務だけでなく、退職金にかかる額や第三セクターなどが抱える含み損など未確定債務もあり、このような債務の分析と対照表への反映の重要性も指摘したとのこと。浜松市は次回6月3日の会合で、どの事業にまで複式簿記の考えを導入するかの案や、東京都などの先進的な公会計制度の事例を示す予定とか。
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