公会計制度見直しの動向

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給食の公会計化

 「奈良の声」サイトが12月3日に掲出していた「奈良県:奈良市、給食費を公会計に 条例案を12月議会に上程」〔浅野善一〕によると、奈良市は、3日に開会した市議会12月定例会に学校給食管理条例案を上程しており、条例は、小中学校の給食費を市が保護者らから徴収することを定めたものという。給食費は現在、学校ごとの私会計になっており、これを市の公会計に切り替えることになるとのこと。徴収は市教育委員会の責任で行われ、26年4月の施行を予定していると記事は伝えている。市教委保健給食課は公会計化により、給食費の透明化を図ることができるとしており、これまでは集金した給食費に残金が出た場合、現金で返す学校もあれば、プリンなど給食に一品追加する学校もあったりと、学校間で差が生じていたといい、こうした点などについて統一化を図ることができるとのこと。給食を実施している小中学校の食材の購入はこれまで、市運営の財団法人、市学校給食会が一括して行ってきており、学校は集金した給食費を同会に納めていたが、公会計化により、同会の役割は市教委が担うことになり、同会は14年3月末で解散の予定とか。同課によると、現在、同会に対する支払いが滞っている学校はないが、児童生徒の滞納に自転車操業で対応してきた学校は、同会解散時にこの滞納分が顕在化する可能性があるとか。市が滞納分の債権を同会から引き継げるかどうかが懸案になっていると記事は伝える。
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大仙市がインセンティヴ予算

 iJAMPに1月12日に掲出された「インセンティブ予算制度を導入=秋田県大仙市」によると、大仙市が、24年度当初予算編成に「インセンティブ予算制度」を試行的に導入するという。23年度予算執行について、市民サービスを低下させることなく、職員の創意工夫で歳出削減や新たな収入確保ができた場合、24年度当初予算編成で部局に余剰額の一部、または全部を追加配分するというもので、インセンティブ(奨励金)を付けることで業務のマンネリ化を防ぎ、職員のコスト意識を高めるのが狙いと記事は伝える。また、奨励金を別の事業に転用することにより、市民サービス向上につながる効果も期待しているとのこと。同市では、26年度に合併特例期間が終了し、普通交付税の合併算定替の適用額が27年度から減少することになっていて、23年度の適用額は約44億円だが、32年度にはゼロになる見通しで、市民サービスの質を維持しつつ、コストを見直すため、同制度を導入することにしたという。インセンティブの付与については、市民サービスを低下させずに各部局の創意工夫で財源を節約したり、収入を生み出したりすることが条件で、財政課によれば、例えば、業務発注方法の変更でコスト削減や、市民協働で人件費の削減などが考えられるということのようだ。今回は試行的に導入して問題点などを検証し、13年度当初予算編成から本格実施したい構えで、同課は「職員にコスト削減の意識を持ってほしい」としているという。
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繰越承認の簡素化

 時事ドットコムに1月15日に掲載されていた記事「予算繰越制度の運用改善=使い切り慣行を排除−財務省」によると、財務省が、執行しなかった予算の一部を翌年度以降に使用することを認める「予算繰越制度」の承認手続きを簡素化する運用改善策を決めたようだ。同制度の十分な活用により、「年度末になると道路が掘り起こされ、ドタバタと工事が行われる」(菅直人副総理兼財務相)と批判される役所の予算使い切り慣行をなくしていくのが狙いで、21年度予算から適用するという。具体的には、財務省による繰越承認の基準を明確化するほか、提出すべき申請書類の数を縮減し、また、財務省によるヒアリングも原則廃止して、審査期間を10日以内に短縮すると記事は伝えている。
 記事は、政府は23年度から複数年度予算の導入を目指しており、まずは繰越制度の改善に着手することにした、と解説しているが、繰越承認の簡素化の方が「使い切り」改善のためには本質的であり、複数年度予算は、予算期間に終期を設ける以上は、使い切りを先送りするだけで、何の改善策にもなり得ない。本来的には、繰越承認制度は予算策定の改善のためのものであるのに、それが機能していない以上、必要なことは簡素化というよりは届け出制度への変更であり、打ち出されている改善策は、ヒアリングの廃止など実質的に届け出制度への変更と思われる。これは財務省の賢明さを讃えるべきだろう。

公表資料:繰越制度の一層の活用に向けた取組[161kb,PDF]
     予算編成等の在り方の改革について(21年10月23日閣議決定)
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将来負担比率の導入

 日経は1月6日に「自治体「隠れ債務」30兆円 退職金見込み額25兆円」との記事を掲出している。
 この記事は、「地方自治体がいずれ負担しなければならない実質的な債務の全容が判明した」として、財政の健全性を判定する「将来負担比率」と呼ばれる指標の中身を日本経済新聞が分析したところ、地方債残高など自治体が抱える借金は約200兆円とされていたが、これに加え退職手当の支払見込み額が25兆円に上るなど、隠れた債務が総額で30兆円に達していることが明らかになったと報じている。この将来負担比率は20年に地方財政健全化法が一部施行されたことに伴い導入されてもので、総務省が昨年9月に全国の自治体の数値を公表したという。自治体が将来負担する債務はこれまで、借金に当たる地方債の残高などが中心だったが、同比率の導入に伴い総務省は退職手当の支払見込額なども、自治体の債務であることを明確にしたと記事は伝えている。

 この将来負担比率は、発生主義に基づく債務の認識によるものではあるが、複式簿記を導入しないと算定できないようなものではない。
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自治体財政健全化の基準作りが難航している

 朝日サイトが11月6日に掲出した「自治体財政健全化の基準 「インフラ赤字」控除へ」は、自治体財政の健全度を測るための基準や計算式づくりに取り組んでいる総務省が、地下鉄や上下水道のインフラ整備で生じた赤字について、将来的に事業が黒字に転じると見込まれる場合などは計算上は赤字とみなさない方向で検討に入ったと報じている。赤字とみなして計算すると、これらの事業に取り組む自治体の財政が見かけ上、大きく悪化するためだとか。自治体の財政破綻を未然に防止するため、今年6月に成立した地方自治体財政健全化法では、自治体の一般会計に加え、上下水道などを含む特別会計もあわせて、連結実質赤字比率や実質公債費比率といった財政指標で健全性を測ることになっており、指標が基準を超えると、起債制限などの措置がとられるが、地下鉄や上下水道事業などには巨額のインフラ整備が必要なため、地下鉄や下水道整備に取り組んできた横浜市が昨年度の集計で、政令指定都市では実質公債費比率が最悪になり、施設建設などの単独事業の起債が制限される基準を超えるといった事態が発生したという。そこで、これらを赤字にみなさないよう求める声が自治体から出ており、総務省は、耐用年数が長いインフラ投資をする場合は、必ず赤字が発生するが、これらの事業では、短期で利益を上げることを想定していないことなどに着目し、資金不足比率など財政指標を計算する際には、これらはやむを得ず生じる「計画赤字」と位置づけて、赤字に算入しない方向で検討に入ったという。地下鉄が全面供用したあとも赤字になったケースなどでも、将来的に赤字を解消できる見込み額が客観的に計算できる場合には、「計画赤字」として控除を認めることも検討しており、造成から分譲まで時間がかかる宅地造成事業でも、控除が可能かどうか検討中というが、実際には、地下鉄建設に巨額の費用がかかったうえ、乗客も見込みを下回り、自治体財政の重荷になるといった事態も起きており、このため、必要以上に投資・運営コストがかさんだ場合や、自治体が料金徴収を怠るなど、経営努力の不足に伴う赤字は、控除を認めない考えというが、そんなことがうまくいくのか。
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単式簿記でも適切な指標は作成可能

 3月10日付けの日経朝刊5面に掲載されている「「隠れ債務」対象に、「黒字」自治体も危機感、行政サービス見直しも」によると、閣議決定された地方財政健全化法案には、財政健全化を判断する新たな指標に、国民健康保険の赤字や第三セクターの負債といった"隠れ債務"も含まれており、総務省がこれから詰める財政悪化の具体的な判定基準しだいでは、これまで健全とみられていた市町村が早期是正の対象になる可能性があるとしている。記事によると、財政状況を判断する4指標のうち、新たに設けるのは「連結実質赤字比率」と「将来負担比率」で、前者は財政規模に対する赤字の割合で、公営ギャンブルや介護保険事業などの赤字も含み、後者は財政規模に対する将来の債務負担の大きさを示し、公社や第三セクターの負債も対象という。

 当然のことながら、これらは、いずれも、複式簿記を前提としていないし、複式簿記化したからといって、これより有能な指標を算出できるわけでもない(退職給与引当金相当額の指標化などは全体を複式簿記化するのと無関係に算出可能だ)。
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予算の連結表を20年度から

 5月9日付け日本経済新聞朝刊5面の「財務省方針、一般・特別会計を連結――国全体の歳出明示へ、08年度から」によると、財務省は一般会計と特別会計(特会)に分かれている国の会計を、来年末の20年度予算編成から、重複分を除いた「連結ベース」で公表する方針を固めたとか。社会保障などの主要経費別に、国がどれだけお金を使っているかが分かるようにするとのこと。
 現在31ある特会と一般会計の歳出項目の共通化作業に着手し、各特会の歳出項目を公共事業や社会保障などわかりやすく分類し、重複計上を除いた上で一般会計と連結するとか。予算書などについて定めた財政法28条に基づき、予算審議の参考資料として国会に提出する方針と記事は伝える。つまり、財政法に手を付けるということかな。それとも、その他必要な書類、で読むのかな。
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モデル事業の成果は?

 時事は11月16日に「モデル事業、事後評価機能せず=ずさんさ浮き彫りに−総務省」を配信。
 記事は、国の予算執行の効率化を目指して16年度から導入された「モデル事業」について、目玉だった政策の実現状況を厳しくチェックするはずの事後評価そのものが、ほとんど機能していないことが総務省の調査で分かったと報じる。事業を行った7省庁すべてで、予算の節減効果や、評価に当たって政策目標の達成度を第三者が客観的に検証できる基準を示していなかったとのこと。導入当初から事後評価の基準が各省任せで、評価の枠組みづくりが課題との指摘があり、国民への説明責任向上をうたい文句に始まったが、そのずさんさが裏付けられた形で、同事業の在り方が問われそうと記事は伝える。

公表資料:モデル事業に係る政策評価の審査結果(要旨(PDF)・本文(PDF))
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国有財産制度の抜本改革

 10月25日付け日本経済新聞朝刊5面に「財務省検討、国有財産法を抜本改正――有効活用へ会計透明化」の記事。
 記事は、財務省が国有地などの国有財産を有効活用するため、関連法制を抜本的に見直す方針と報じる。国有財産法や庁舎法が対象で、民間企業が庁舎を長期間賃貸できるように定期借地権をつけたり、会計処理を透明にするため資産評価を民間基準とそろえたりするのが柱とのこと。財政制度等審議会で具体策を協議し、来年の通常国会をメドに改正法案を提出すると記事は伝える。財務省は25日に開く財制審の国有財産分科会(部会長・宮原賢次住友商事会長)で協議し、こうした考えを盛り込んだ中間答申をまとめるとのこと。国有財産は耐震基準を満たしていない老朽庁舎も多く、また庁舎の民間貸し付けを事実上禁じていて、資産が有効活用されていないとの批判が多かったとか。同分科会の中間答申では、庁舎の空きスペースを調べ、民間に貸し付けたり、逆に民間などから施設を借りて庁舎を1カ所に集約したり、効率的な活用策を提言するとのこと。また、従来国の保有資産は簿価で評価されており、現在時点での価格と乖離(かいり)している懸念があるため、資産の評価方法を見直すとか。財務省は民間活力を引き出すため、国が抱えたままの資産を民間にできるだけ開放する考えだが、国が使いこなせない資産の価値は低いとの見方もあり、財務省の狙い通りに効果を上げるか懸念する向きもあると記事は評する。
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