公会計制度見直しの動向

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神奈川県の「見える化」

 日経サイトが8月28日に掲出した「神奈川県、会計を「見える化」」によると、神奈川県は28日、四半期ごとに各部署や公共施設の会計数値を公表すると発表したという。部署や施設ごとの収支や事業の進捗状況を明らかにして、外部から見えやすくするというもので、同日からホームページ上で3カ月ごとに公表し、県民からの意見も募集するという。県庁職員のコスト意識の向上にもつなげると記事は伝えている。「会計の見える化」は知事部局などの事業経費・人件費などの支出、収入、職員の配置状況などを明示するもので、事業の実施状況を3カ月ごとに把握できるようになるとのこと。県有の1292施設や道路など公共施設では、現状と今後30年間の維持修繕コストを公表し、県によると、こうした取り組みは全国で初めてとか。「県民利用施設の見える化」では、県が24年から始めた緊急財政対策で見直しの議論の対象となった124の県民利用施設の来館者や収支も明らかにし、利用者1人当たりの県負担額なども算出して効率的な施設運営に役立てるという。黒岩祐治知事は「緊急財政対策は継続中で、県有施設全体をどうするのか、(県民と)問題意識を共有したい」と話したと記事は伝えている。

公表資料:「会計」・「県公共施設」・「県民利用施設」の見える化ページ
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町田市が事業別財務諸表を作成

 タウンニュース町田ページに8月29日号として掲出されていた「町田市 事業別にコストを明示 全国初 新公会計方式導入」によると、町田市は新公会計方式による財務諸表に加え、事業別の財務諸表を公開したという。新公会計方式は従来の官庁会計に加え、民間企業が取り入れている複式簿記の手法を取り入れたもので、24年度から新公会計制度を導入しており、事業別財務諸表の作成は全国市町村で初の試みと記事は伝えている。今回公開した事業別財務諸表は、24年度に実施した270事業を掲載しており、各一覧には事業ごとに組織のミッションや事業概要、成果を明記しているので、事業の費用対効果を検証しやすくなっているという。またコスト分析も掲載し、「利用者1人あたり」、「開催日数あたり」でどれくらいのコストがかかったがわかるようになっているとのこと。石阪丈一町田市長は「民間企業が取り入れている普通の会計方式を導入することで各事業の財務上の課題が見えやすくなる。毎年行うことで、コストと成果を比べることができるので、財務状況、事業の改善点も明確になり、今後の市政運営にいかしていきたい」とコメントしているという。

公表資料:町田市の新公会計制度について
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地方財政審での議論

 総務省サイトに掲出されている「平成25年度地方財政審議会(7月5日)議事要旨」に興味深いやり取りがある。

議題
 地方公共団体の平成23年度決算に係る財務書類の作成状況等について
 今回の議題は、地方公共団体の平成23年度決算に係る財務書類の作成状況等及び地方公会計の現状と今後の方向性について、説明を受けるものである。

要旨
 標記の件について、説明を受け、質疑応答及び意見交換を行った。
 
(主な内容)

○ 財務書類の活用状況をみると、外部への説明は進んでいるものの、行政評価等への活用までにはつながっていないと思われるが、どこに問題があるのか。
→ 行政評価等への活用につなげていくためには、事業別・施策別に財務等の内容を把握するための固定資産台帳の整備が必要と考えているが、多くの地方公共団体が、固定資産台帳を整備せずに財務書類の作成が可能な総務省方式改訂モデルでの作成となっている。このため、今後の新地方公会計の推進に関する研究会において、その整備の必要性等について議論しているところである。

○ 固定資産台帳の整備には多大なコストと時間がかかり、地方公共団体にとって大きな負担となるのではないか。
→ 固定資産台帳の整備について、現状でもその内容や精度にばらつきがある中で、どの程度のものを整備すべきかについては、特に資産の大半を占めるインフラ資産の取扱いも含め、実務的な観点から検討を進めていくこととしている。

○ バランスシート上の資産が多額となるため、財政状態がよく見えるようなミスリーディングが生じるおそれがあるのではないか。
→ ミスリーディングが生じないよう、財務書類の注記等でわかりやすさにも配慮しながら整理していきたい。

○ 財政の効率化について、政府では予算において実現するが、財務書類は決算の改革であり、予算制度の改革も重要である。

○ 住民等への説明に際しては財務書類だけでは理解しづらいため、説明の仕方に工夫等が必要である。
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民間企業的な財務諸表が欲しい人は存在しているようだ

 日経サイトが掲出していた「公共投資の判断に活用 会計に複式簿記、自治体に要請」〔編集委員 磯道真。有料会員限定〕は、地方自治体の会計が民間企業に少し近づきそうだ、と伝え、総務省は固定資産台帳の整備と民間企業並みの複式簿記を、自治体に要請する方針を固め、現在は複数のモデルが混在している会計基準の統一も視野に入れると報じている。基準が統一されれば自治体間の比較が容易になり、普及に弾みがつくというのが論者の言い分。5月の経済財政諮問会議では民間委員の1人が「発生主義・複式簿記に基づくものは10%以下だとうかがっているので、5年以内に完備するよう取り組みをお願いする」と地方財政の「見える化」を訴えたといい、1カ月後、政府は「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」に「企業会計原則を前提とした地方公会計の整備を促進する」との文言を盛り込み、閣議決定したとの由。これを踏まえ、総務省の研究会は7月下旬の次回会合で中間とりまとめを議論するという。価格情報の入った固定資産台帳の整備や、現金と実物資産の増減をセットで記す複式簿記の導入を自治体に求めることでは既に一致しており、あとは会計基準の統一や、固定資産を取得原価で評価するのか時価で評価するのかといった問題が残っているとのこと。
 国の資産・債務改革を受けて総務省は18年に自治体に財務書類の作成を要請しており、19年度決算から連結貸借対照表などの整備が進んでいて、今年3月末時点では72%の自治体が作成済みだが、その8割強は収入と支出を記した決算統計の組み替えで作る簡易版であり、多くの自治体がいまだ資産台帳を持たず、資産がどれだけあるのか把握していないと伝えているが、語弊がある表現だ。道路台帳だって、橋梁台帳だってある。記事は、「しかも総務省のモデルは、税収を企業の売り上げに当たる「収入」に含めず「資本」として扱う。」と語り、あたかも論外のように語って、その理由を語らない。
 「企業会計とは大きく異なるため、財務書類を公表しても「住民からの問い合わせや反響はほとんどない」(九州の市)のが実態だった。」と説くが、そもそも公会計を民間企業の方法で表示することに意味が無いからと理解すべきではないのか。記事は、「利益を追求しない自治体の会計を、民間企業に合わせることに抵抗感を持つ学者や自治体職員は依然多い。」としているが、利益追求かどうかが問題なのではなく、「交換」経済の中で一物二価(在庫価格と販売価格)を処理するのに適した複式簿記は、税金や補助金など非交換的な経済が多くを占めていて、かつ、一物二価がほとんどない公会計には無意味だ、ということなんだが。
 記事は、「それでも老朽化した資産の更新時期を見極めるには、減価償却など発生主義の考え方が欠かせない。」と説くが、減価償却や減損会計で更新時期など見極められるはずもない。記事は「先進自治体では活用も進みはじめた。」として、「例えば東京都。神津島の漁港に流入する土砂を取り除くため、毎年8000万円ほど使っていた。だが、16億円かけて防砂堤を設置すれば年間の実質的なコストは3700万円で済むことが判明。10年度に事業化に踏み切った。千葉県習志野市などは、年ごとの資産更新に必要な額を見積もり、対策を練りはじめた。」と説いている。それを言うなら、神奈川県の「見える化」は複式簿記を導入することなく見積もっていることも紹介すべきだろう。
 記事は、「住民の関心が乏しいのは、基準がバラバラで他の自治体と比較できないことも大きい。自治体の合意を得やすいよう、総務省は行政コスト計算書と純資産変動計算書を一つにまとめる案など示した上、研究会の統一案を決めたい考えだ。」としているが、「バラバラ」というより、ほとんどが改訂モデルであり、他のモデルが例外的と言うべきだろう。
 記事は「ただ研究会にオブザーバー参加する東京都は、国際公会計基準に近い独自方式にこだわり「妥協はしない」(会計管理局)との立場。同じ方式を採用する大阪府と併せ、総務省が彼らを納得させられるかどうかが基準統一のカギとなる。」と説くが、国会議員には言及していない。
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公営企業会計基準の適用範囲拡大へ検討開始

 日経サイトが6月21日に掲出している「全公営企業に民間会計基準、18年度にも 経営改革促す」〔有料会員限定〕によると、水道、病院、地下鉄、電力といった約3千の公営事業には26年度予算から民間並みの会計の導入を義務付けているが、総務省は30年度にも、扱いが未定だった下水道や簡易水道など残りの約5800事業にも導入する方向で検討に入ったという。約8800あるすべての公営企業全てへの適用を目指すもので、人口減で経営が悪化する企業が増えているが、会計基準が特殊で住民にわかりにくかった経営実態を明らかにし、自治体に施設の統廃合や住民から徴収する料金の引き上げなどの経営改革を迫ると記事は伝えている。新しい基準によると、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の作成を義務付け、外部から損益、資産・負債、現金の状況がわかりやすくなるとしているが、通常の民間企業の財務諸表を見慣れた人に分かりやすくなるというものだろう。特殊な会計基準を改めるほか、退職金など将来支払うお金もあらかじめ負債に計上し、収益性の低下した資産の帳簿価格を下げる減損処理も採用する内容ではある。記事は、経営の苦しさが明確になれば自治体も住民に事業の存廃や統廃合を提案しやすくなり、存続に向けて料金を上げる場合の理解も得やすいし、民間企業に事業取得や運営受託を促すことができ、経営改善の選択肢も広がると説いている。公営企業の決算規模は約17兆円で、9割が黒字だが、実態は自治体の一般会計から年3兆円超を繰り入れて運営費を賄っており、公営企業の施設の老朽化が進み、更新費用は増加の一途であり、放置すれば、一般会計の負担も増すと記事は伝える。自治体に連結ベースでの財政立て直しを促す法律が08年度に施行されたのを機に、公営企業の健全化に取り組む自治体は増えており、青森県黒石市は19年度から下水道の使用料を平均12%引き上げており、北海道釧路市は24年度から10年間の改革案をつくり、下水処理場などの民間委託で管理費を抑える方針を示していると記事は伝えている。全面適用は7月をメドに有識者らによる検討会を設けて協議する方針であり、全事業に導入を強制するか一部を任意にとどめるかも詰めるという。

 25年7月4日から「地方公営企業法の適用に関する研究会」が行われていることを報道しているのだろう。
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