公会計制度見直しの動向

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浜松市が17年度財務諸表を公表

 9月30日付け日本経済新聞地方経済面6面の「浜松市、大幅見直し、市民向け財政資料――新財務諸表、全国初の導入」の記事は、静岡県浜松市が29日、市民向けに市の財政状況を公表している資料「浜松市の財政のすがた」を大幅に見直したと報じるもの。これまでは市債残高など数値の公表が中心だったが、さまざまな財政指標について他都市との比較や市としての自己評価などを加え、よりわかりやすい内容にし、また、総務省が示す新しいバランスシートなど財務諸表4種類を全国で初めて導入したという。同日に公表した17年度版では財政力指数、公債費比率などの指標について政令指定都市の平均値と比較し、他都市と比べて財政状況が良いのか悪いのかといった自己評価と改善方針について記しているとか。財務諸表についても総務省が示す方式に沿ってバランスシートの項目を改めたほか、市の資産の動きを示す純資産変動計算書などを新たに導入し、施設別の財務諸表も試験的に導入したらしい。
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不納欠損引当金計上を浜松市が提案する方向

 中日新聞サイト静岡版ページは9月25日に「浜松・新公会計制度研究会 『浜松モデル』総務省に提案へ」を掲出して、24日に浜松市役所で開かれた浜松市の新公会計制度研究会の第6回会合で示された報告書の骨子案について、時効で徴収不能となる市税を不納欠損見込み額として計上するなど、従来の公会計にはなかった浜松市独自の方式を取り入れており、全国でも例のない取り組みとして、公会計制度の全国モデルを策定する総務省の研究会に提案すると報じる。記事によると、骨子案には不納欠損見込み額の計上のほか、売却可能資産の時価ベース評価、地方債の利子分を含めた将来負担の算出などを盛り込んでおり、浜松市財政課は「浜松モデルが全国基準になればとの思いがある」と話している。この日、議論された不納欠損見込み額は、民間企業の貸倒引当金に該当するもので、市の17年度末の市税の滞納繰越額約2万9千件、計約54億9400万円について、これまでは債権として全額を資産に計上していたが、実際には時効などで不納欠損が生じており、欠損額の算出方法としては、全体の53%の29億円にのぼる80万円以上の高額債権は、徴収可能性をランク付けし、過去の実績から不納欠損見込率を設定し、80万円以下の債権は事務的な負担を考慮してランク付けはせず、過去5年間の平均不納欠損率を用いて算出するという。実態に即した表示をすることで、財政状況の透明性向上を図るという趣旨らしい。ちなみに、市は一方で滞納徴収にも力を入れており、19年度から国民健康保険料や上下水道料など部局横断的に債権回収にあたる債権回収対策課を設置し、厳しく対応するとしているという。公会計制度については、自治体の財政危機の深刻化によって、より透明性の高い制度の導入が求められ、総務省は全国の自治体が比較可能な財務諸表の作成モデルの研究を開始し、浜松市も今年5月、民間企業の会計手法を取り入れた公会計制度を導入するため研究会を発足させて検討を続けてきていて、研究会は11月6日に、報告書の最終案をまとめるという。

関連:浜松市が検討を開始
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投資家は自治体に公開企業並みの開示を求める

 9月28日付けの日本経済新聞朝刊7面の「開示されない地方債リスク」(金融取材メモ)〔N〕は、財政破綻状態に陥った北海道夕張市など、地方自治体の深刻な財政悪化が進んでおり、自治体の破綻法制づくりに向けた議論が始まったものの、地方債の債務不履行(デフォルト)に備えて情報を開示する法律はなく、法改正も含めた対応策が新たな金融行政の課題として浮上してきたと伝えている。金融庁の関係者は、8月末に総務省が立ち上げた自治体の破綻法制を検討する研究会について、結論次第では「地方債も紙くずになる」との事態になりかねないため、その議論の行方を注視しており、その背景として、今の投資家保護制度は「地方債にデフォルトは起きない」ことを前提としていて、証券取引法にも開示ルールの規定はなく、債券の発行企業には財務内容を定期的に投資家に示す義務があるが、自治体は例外となっており、これは、自治体には課税権限があるうえ、財政破綻をしても国が支援する仕組みがあることが根拠となっていると教示している。地方債市場は変わり、自治体が公募債の発行条件を金融機関と個別に交渉し始めて以来、財政実態に応じた金利格差が発生し始めていて、リスクの引き受け手として投資家の存在感が高まることをにらみ、公開企業並みの開示制度の導入を求める投資家も増えているとか。ただ、開示の義務付けは、開示内容が適切か否かについて、金融庁が自治体を監督する構図が生じ、虚偽記載があった場合は証券取引等監視委員会が自治体を調査することにもなることから、自治体への金融庁の影響力を高めるため、総務省は「干渉は受けない」という立場で、投資家保護という金融庁の論理を、今の霞が関は必ずしも歓迎しないと記事は説明している。
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