公会計制度見直しの動向

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産経が東京都方式を推奨する記事

 MSN産経ニュースサイトが12月9日に掲出している「財政健全どっちが分かる? 自治体会計の規格めぐり綱引き」という記事は、自治体の財政健全化に向け、企業会計に近い財務諸表を作成する「新公会計制度」に、規格争いが持ち上がっていると報じている。まず、「自治体の財政健全化に向け」という表現に違和感を覚えるが、記事は、続けて「多くの自治体が採用する総務省モデルと、東京都が独自に開発した方式が併存。大阪府はこのうち都方式の導入に踏み切る。ルールの統一が急がれているが、優れているとされる都方式の方が少数派。「VHS対ベータ」のようなかつてのビデオデッキの規格争いをほうふつさせる“泥仕合”になる恐れもある。」としている。
 記事は、「改革は東京都庁から」との小見出しを付けて「これまでの自治体会計は、1年間で現金の出入りを記す単式簿記。借金も自治体に現金が入ってくる形のため「収入」として扱われるなど「財政の実態が見えにくい」との批判もあり、経営の観点で財政を考える上ではこの仕組みは不十分という指摘があった。」とし、「この解決にいち早く乗り出したのが東京都庁。新会計に関する検討委員会を平成14年に立ち上げ、17年には複式簿記を用いた独自の仕組みを開発した。」とするが、これは、ちょっと事実誤認と言うべきだろう。たしかに、東京都は第三セクターの問題を民間有識者に相談してバランスシートがないことに呆れられて取り組み始めたわけだが、例えば、自治省(現総務省)がバランスシートの作成手法について取りまとめた「地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書」(概要)は平成12年のものだ。いわば、この改訂前モデルがあるからこそ、現行の総務省の二つのモデルの内の一つは改定モデルと称されているわけだが、記事は、「東京都の動きに対し、総務省も18年5月、2種類の新しい会計モデルを公表。リアルタイムで財政状況を把握しにくいといったデメリットもあったが、「この方式を導入すれば、全国の自治体同士の比較をしやすい」という意見も根強く、大半の自治体はこちらを採用することになった。」と、あたかも総務省モデルが後発であるかのように伝える。そして、「少数派となった東京都と大阪府は多額の資金を投じてシステム開発をしている上、自陣営が優れているとの自負もあり、ほかの自治体を引き込もうと、11月上旬に都庁に全国の自治体の会計担当者らを集めたシンポジウムを開催。東京都方式のメリットを訴えている。」と説いている。このシンポジウムとは、これのことと思われる。
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