公会計制度見直しの動向

<< July 2025 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

新潟県が会計制度改革会議を4月に設置

 3月20日付け日本経済新聞地方経済面(22)の「会計制度、県が改革に着手、透明・効率、10年メド移行」によると、新潟県も、公会計の透明性と効率を高めるための改革に着手するようだ。県が19日に発表したもので、企業会計の手法を導入して負債や資産の額を把握したり、会計手続きを効率化したりするという。4月に、部局横断で新会計制度を議論する場として、副知事をトップとする「会計制度改革会議」を設置し、方針を集中議論して今年8月までに新制度の骨格を固め、会計にかかわる情報システムの開発などに着手するという。22年3月までに新会計システムに完全移行することを目途としているようだ。記事によると、「現在の会計制度は、現金の出入りだけで収支を把握する「現金主義」をとっている。どれだけの負債や資産があるかつかみづらく、企業会計の手法の導入が求められていた。」だと。経費精算や予算編成など会計事務の効率化も同時に進めるということのようで、これは結構なこと。泉田裕彦知事は「出資法人や外郭団体なども含め(会計制度が原因で)問題がわからず先送りになっていることがあまりに多い」と指摘し、抜本改革の必要性を強調したというが、問題を分かっていなかったことを会計制度の所為にされてもなぁ……。
comments (0) | trackback (0)

単式簿記・現金主義をなめた議論

 3月15日付け日本経済新聞朝刊33面の「特集――自治体経営シンポジウム、シンポ第1部を聞いて、外部の目でメス入れよ」〔産業地域研究所研究員 前島雅彦〕は、シンポジウムにおける宮脇教授の言葉として「行政の認識しない非効率」という表現を引用し、それをあぶり出すには住民など外部からの指摘が必要だが、現在の公会計制度では難しいだろうと説く。記事によると、「単式簿記・現金主義の考えに基づく公会計制度は、現金収支の記録が基本だ。自治体は台帳で資産、負債の管理をしているが予算、決算書との結び付きは弱い。しかも台帳の記載内容は自治体によってまちまちで資産価格の記録がないところが大半だ。これでは資産の効率運用は難しく、減価償却費を含めた事業コストも計算できない。」という。まず、「決算書」として収入支出決算書しかイメージせずに資産・負債との関連が薄いと説くのはおかしな話だし、さらに、台帳の記載内容がまちまちなことは資産の効率運用とは関係のない話だし、資産価格の記録がない、というのは会計制度以前の話だろう。また、「減価償却費を含めた事業コスト」の算出は現行制度下でも十分に可能であり、現に行っている自治体もある。
 「負債の膨張や財源の先細りに直面している自治体にとって、経営効率化は喫緊の課題だ。費用対効果を計って事業を選別したり、遊休資産の売却で負債を圧縮するなど「認識しない非効率」にメスを入れる必要がある。しかし、現金収支の帳尻合わせに終始する現制度では対応できない。」と記事は説くが、「現金収支の帳尻合わせに終始」している訳ではないことは、各自治体が曲がりなりにも貸借対照表もどきを作成していることからも明らかだ。
 「民間企業は資本市場と向き合い、その声に耳を傾けながら経営改革を進めてきた。自治体も同じはず。経営実態を分かりやすく公開し外部の目にさらせば気付かなかった改善点が浮かび上がる。自治体経営を変えるには会計制度の抜本改革が不可欠だ。」と記事は締め括っているが、別に、会計制度を変えずとも改善点は浮かび上がる。

 公会計における費用回収型事業と準公共財(直接受益者特定可能)提供事業と純粋公共財提供事業とは整理して議論する必要があるのだが……
comments (0) | trackback (0)

投資家に公会計制度見直しに関心

 3月8日付けの日経金融新聞3面の「自治体財務書類、信頼なお遠く、東京都が1200億円過大計上」〔菅原誠吾〕は、東京都の包括外部監査を行った公認会計士が報告書で指摘した、産業労働局で中小企業向け制度融資貸付金が17年度末で1200億円超過大に計上されていたことが、東京都が企業会計の考え方を取り入れて毎年作成し、17年度版を昨年12月に公表した「機能するバランスシート」に影響しているかについて、「現金の出入りに基づいた普通会計の数字を組み替えて作成しており、今回の帳簿ミスの影響はない」(財務局主計部財政課)と伝えている。この「機能するバランスシート」は法定決算書類を審査する監査委員によるチェックの対象外で、外部の会計士も監査しておらず、数字の信頼性を担保する仕組みが整っていないとも記事は伝えている。記事は、都が18年度から「複式簿記・発生主義」の考え方を本格的に取り入れた財務会計システムをスタートさせており、職員が現金を支出する際に、システムで簡単な入力作業を追加することで、ほぼ自動的に複式簿記の仕訳ができ、今年夏ごろには新システムによる18年度の財務書類が完成する見込みだが、外部チェックの仕組み整備は今後の課題となっていると紹介している。さらに、記事は、総務省が18年7月に実務研究会を発足させて、地方自治体向けの具体的な公会計基準作りに着手していること、企業会計の考え方を取り入れた財務書類はまだ法定決算として位置づけられていないことから、だれが監査するのか、また具体的な監査手法などの議論は進んでいないのが実情であることを伝え、昨年以降、公募地方債の発行条件が自治体間で差がつき始めており、投資家の間で企業会計に準じた財務書類に対する関心が高まっており、自治体が投資家や住民に対する説明責任を果たすためにも、数字の正確さを担保する監査制度導入に向けたルールの整備が不可欠と論じている。
続きを読む>>
comments (0) | trackback (0)

自治体の2方式は桜内方式と森田方式

 3月1日付け日経夕刊9面の「新潟大学桜内文城氏、トーマツ森田祐司氏――自治体会計、改革をリード(波頭旗頭)」〔証券部 磯道真〕によると、総務省の新地方公会計制度研究会が作成した公会計基準の二つのモデルは、会計改革を実務面でリードしてきており、同研究会及び同実務研究会のメンバーでもある新潟大学経済学部の桜内文城助教授とトーマツの森田祐司代表社員の二人がそれぞれ提唱したもので、「桜内方式」と「森田方式」と呼ばれているそうな。二つの方式は、記事によると、企業会計と同じ発生主義・複式簿記で連結ベースのバランスシートや行政コスト計算書を作成する点は共通で、違いは森田方式が小さな市町村でもすぐに作れるよう既存の指標を最大限活用するのに対し、桜内方式はより企業会計に近く、予算編成の意思決定メカニズムを変えることまで念頭に置いていることだという。桜内氏はもともと財務官僚で、「政府の意思決定がなぜ国民の望むものと乖離するのか」という思いからこの分野に足を踏み入れており、「行政側に人のカネを預かっているという意識が薄かった」とみて、公会計改革の狙いを、住民にも事業の財源や資産の状況、将来負担がわかるようにすることに主眼を置いているが、一方の森田氏は、もともとは米国会計基準やシステム監査の専門家であり、ニュージーランドの行政改革の本を翻訳したのを機に公会計の世界へ入り、大分県臼杵市の財務諸表の作成に協力して第一人者になった人物で、「企業会計をうまく使えば受益と負担の関係を整理できる」とし、また企業は通常、財務会計だけで内部向けの管理会計は公表しないが、「官は意思決定も表に出すべきだ」と主張していると記事は紹介している。二人のモデルは総務省の研究会で擦り合わせが進むが、最終的には両方とも採用され、自治体がどちらかを選べる可能性もあると記事は見ている。記事は「自治体の負担軽減が今後のカギとなりそうだ」と締め括っているが、問題は両方式が翻訳できるものかどうかではないのかな。
comments (0) | trackback (0)

日経が自治体の会計制度見直しについて不勉強な記事

 2月27日付けの日経朝刊地方面に「自治体会計ABC(上)なぜ注目――財政悪化広がり改革機運」が載り、続いて28日付けに「自治体会計ABC(中)何が問題――赤字隠し見えにくく」が、3月1日付けに「自治体会計ABC(下)どう変える――見通し含めた負担把握」が載った。
 これらは、「「公会計制度」の課題を整理する」もので、現行の制度は予算、決算とも単年度での現金の出入りのみを記録する仕組みになっており、複数年にまたがるプロジェクトの全体収支などがわからないほか、自治体が保有する資産や負債、コストなどの開示も求められていないとする。英国やオーストラリアなどでは1980年代後半から90年代にかけて、予算や決算に民間の会計手法が採用されたと紹介し、日本では、地方財政の悪化や自治体へのムダ遣い批判などを背景に、90年代後半になってから改革への機運が高まったとしている。16年度決算で見ると、普通会計ベースの貸借対照表(バランスシート)を作成しているのは全自治体の半数、公社や第三セクターの財政状況なども含めた連結ベースでの情報開示は1割に満たず、これからの課題としている。
続きを読む>>
comments (1) | trackback (0)

総務省方式と東京都方式の相違は資産評価と税収の取扱い

 26日の日経は26面と27面の見開きで公会計を取り上げている。その26面には「自治体、会計改革急ピッチ―国と東京都、基準作り競う、「比較できず」統一望む声」という記事がある。この記事は、東京都と岐阜県が昨年、庁内のコンピューターシステムを大幅刷新して、仕訳処理を自動化し、従来とほとんど変わらない入力操作で、バランスシートなど民間流の決算書が作成できるようにしたこと、山形県や静岡県浜松市、大分県臼杵市も同様のシステムを構築する計画であることを紹介している。そして、東京都千代田区が行政の効率化を目的として事業別のコスト計算を導入していて、愛知県豊橋市が人件費を、また兵庫県尼崎市が人件費と減価償却費を各事業の決算額に加えるという手法を採用して、市場化テストの体制を整備しているとした上で、「千葉県市川市は活動基準原価計算という企業経営手法を活用している。各事業の人件費を窓口や記録といった活動別に計算、人員配置や作業内容の改善につなげている」としているが、では、千代田区がやったことはABC分析ではないのだろうか?。
 記事は、自治体独自の取り組みが進むなか、総務省もバランスシートなどの統一基準作りを急いでいるとして、研究会の話を紹介し、報告書の中で都道府県と人口3万人以上の市に対し、20年度決算からバランスシート、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書を、新たな基準で作成するよう求めていると報じている。記事は、新基準による決算書を検証するため、浜松市と岡山県倉敷市をモデルとして試作作業を進め、現在はその作業も終了しており、問題点を洗い出したうえで、各自治体に配布する作成マニュアルを3月末までにまとめるつもりとした上で、東京都の動きも紹介する。東京都は独自の基準をまとめ他の自治体への普及を狙っており、希望する自治体には会計処理のソフトウエアを無償提供するとしており、公会計改革検討のため全国知事会が3月に設置するワーキンググループでも、リーダー役になっていると紹介している。総務省の新基準と東京都の基準の違いは資産評価と税収の扱いで、総務省は資産を原則時価で評価、税収は資本(出資)とみて純資産変動計算書に計上するのに対し、都は資産を取得原価で計上、税収は収入として行政コスト計算書に計上しているという。記事によると、このように総務省と都が別々の動きをしていることについては、専門家からも「基準がまちまちだと自治体間の比較分析が難しい」(日本格付研究所)、「基準の統一化が難しいなら読み替えできる仕組みが欲しい」(格付投資情報センター)との声が聞かれるという。
comments (0) | trackback (0)

日経が公会計改革取材班を設けているらしい

 2月26日の日経朝刊に「自治体、会計改革急ピッチ―施設・サービス低コストに」〔公会計取材班〕という記事が載っている。そこで取り上げられている例を見ていくと、

  • 大分県臼杵市について、10年前に企業経営者から就任した市長が公会計改革を手がけ、全国屈指の悪さだった市の財政に直面して独自のバランスシートを作成し、市の税金で賄う負債や将来の退職金の総額を明らかにし、バランスシートの作成を機に市役所内には自己負担を抑える工夫に知恵を絞る風土が芽生えたと説く。その成果がCATV網の整備で20億円の事業費は交付税措置がある補正予算債や補助金をフルに活用して市の実質負担をほぼゼロに抑えたというが、補助金の活用には自己負担が必要なはずだが、はて。

  • 事業別収支を計算し、高コスト体質の事業を民間開放する例として記事は、東京都千代田区が全765事業について、人件費と減価償却費を加えた“フルコスト”を算出した結果、例えば、神奈川県にある区の保養所の利用者一人当たりのフルコストが1泊1万9千円と一流旅館並みの費用がかかっており、コスト削減は限界として民間開放を決めたこと、学校給食で民間開放を進め、1食当たり費用が食材を除いて千円だったのを段階的に民間委託して5百円にまで下げたこと、広報紙に毎年、「保育のコスト」を欠かさず載せるなど、税金の使い道に対する区民の関心を高めていることを紹介している。

comments (0) | trackback (0)

新地方公会計制度実務研究会の動き

 総務省の新地方公会計制度実務研究会の動きを見ておく。
 18年7月12日の第1回の議事録では、今後の予定として「モデル団体(浜松市・倉敷市)において、第2章モデル(PB表示モデル)と第3章モデル(総務省方式改訂モデル)、それぞれ検討チームを編成し、実証的検証を実施」としている。配布された「今後の進め方(案)」によると、年内に5回開催して取りまとめを行うとある。
 第2回で配布された「今後のスケジュールについて(案)」によると、1月末を目途に「研究会で報告書を取りまとめ」とある。
comments (0) | trackback (0)

東京都のセミナーに全国から4百人

 1月14日付けの日本経済新聞朝刊の1面「自治体会計に変革の波、情報開示、住民と「接近」――子供にツケ30万円」(公会計取材班)によると、会計制度改革で最先端をいく東京都が昨年12月に、自治体職員向けのセミナーを開いたところ、全国から4百人超が参加し、制度改革に向け具体的なアドバイスを得ようと、個別相談のブース前には長蛇の列ができ、「これほど反響が大きいとは」と担当課長が驚いたという。
comments (0) | trackback (0)

浜松市新公会計制度研究会報告書

 浜松市は12月8日にサイトに「浜松市新公会計制度研究会報告書」を掲出している。内容は次のとおり。
(1)浜松市新公会計制度研究会報告書全文
(2)参考資料 
 (資料1)公会計の体系について
 (資料2)不能欠損見込み額の見積もりについて
 (資料3)公有財産台帳の段階的整備について
 (資料4)新しい財政指標について
 (資料5)施設別バランスシート、行政コスト計算書の試作モデルについて(PDF形式・183KB)
 (資料6)新財務会計システムの概念図について(PDF形式・44KB)
(3)浜松市公会計改革 アクション・プラン(PDF形式・279KB)
(4)アクション・プラン スケジュール(PDF形式・86KB)
新公会計制度研究会報告書全文、参考資料、アクションプラン、スケジュール PDF版678KB
(5)浜松市の財政のすがた
comments (0) | trackback (0)
<< 8/11 >>