公会計制度見直しの動向

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投資家に公会計制度見直しに関心

 3月8日付けの日経金融新聞3面の「自治体財務書類、信頼なお遠く、東京都が1200億円過大計上」〔菅原誠吾〕は、東京都の包括外部監査を行った公認会計士が報告書で指摘した、産業労働局で中小企業向け制度融資貸付金が17年度末で1200億円超過大に計上されていたことが、東京都が企業会計の考え方を取り入れて毎年作成し、17年度版を昨年12月に公表した「機能するバランスシート」に影響しているかについて、「現金の出入りに基づいた普通会計の数字を組み替えて作成しており、今回の帳簿ミスの影響はない」(財務局主計部財政課)と伝えている。この「機能するバランスシート」は法定決算書類を審査する監査委員によるチェックの対象外で、外部の会計士も監査しておらず、数字の信頼性を担保する仕組みが整っていないとも記事は伝えている。記事は、都が18年度から「複式簿記・発生主義」の考え方を本格的に取り入れた財務会計システムをスタートさせており、職員が現金を支出する際に、システムで簡単な入力作業を追加することで、ほぼ自動的に複式簿記の仕訳ができ、今年夏ごろには新システムによる18年度の財務書類が完成する見込みだが、外部チェックの仕組み整備は今後の課題となっていると紹介している。さらに、記事は、総務省が18年7月に実務研究会を発足させて、地方自治体向けの具体的な公会計基準作りに着手していること、企業会計の考え方を取り入れた財務書類はまだ法定決算として位置づけられていないことから、だれが監査するのか、また具体的な監査手法などの議論は進んでいないのが実情であることを伝え、昨年以降、公募地方債の発行条件が自治体間で差がつき始めており、投資家の間で企業会計に準じた財務書類に対する関心が高まっており、自治体が投資家や住民に対する説明責任を果たすためにも、数字の正確さを担保する監査制度導入に向けたルールの整備が不可欠と論じている。
 たしかに、民間の資金運用サイドに、課税主体の財政状態も民間企業に似せた決算表示があれば理解できる、という錯覚があることは確かだろう。
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