公会計制度見直しの動向

<< 日経が自治体の会計制度見直しについて不勉強な記事 | main | 投資家に公会計制度見直しに関心 >>

自治体の2方式は桜内方式と森田方式

 3月1日付け日経夕刊9面の「新潟大学桜内文城氏、トーマツ森田祐司氏――自治体会計、改革をリード(波頭旗頭)」〔証券部 磯道真〕によると、総務省の新地方公会計制度研究会が作成した公会計基準の二つのモデルは、会計改革を実務面でリードしてきており、同研究会及び同実務研究会のメンバーでもある新潟大学経済学部の桜内文城助教授とトーマツの森田祐司代表社員の二人がそれぞれ提唱したもので、「桜内方式」と「森田方式」と呼ばれているそうな。二つの方式は、記事によると、企業会計と同じ発生主義・複式簿記で連結ベースのバランスシートや行政コスト計算書を作成する点は共通で、違いは森田方式が小さな市町村でもすぐに作れるよう既存の指標を最大限活用するのに対し、桜内方式はより企業会計に近く、予算編成の意思決定メカニズムを変えることまで念頭に置いていることだという。桜内氏はもともと財務官僚で、「政府の意思決定がなぜ国民の望むものと乖離するのか」という思いからこの分野に足を踏み入れており、「行政側に人のカネを預かっているという意識が薄かった」とみて、公会計改革の狙いを、住民にも事業の財源や資産の状況、将来負担がわかるようにすることに主眼を置いているが、一方の森田氏は、もともとは米国会計基準やシステム監査の専門家であり、ニュージーランドの行政改革の本を翻訳したのを機に公会計の世界へ入り、大分県臼杵市の財務諸表の作成に協力して第一人者になった人物で、「企業会計をうまく使えば受益と負担の関係を整理できる」とし、また企業は通常、財務会計だけで内部向けの管理会計は公表しないが、「官は意思決定も表に出すべきだ」と主張していると記事は紹介している。二人のモデルは総務省の研究会で擦り合わせが進むが、最終的には両方とも採用され、自治体がどちらかを選べる可能性もあると記事は見ている。記事は「自治体の負担軽減が今後のカギとなりそうだ」と締め括っているが、問題は両方式が翻訳できるものかどうかではないのかな。
comments (0) | trackback (0)

Comments

Comment Form

Trackbacks