公会計制度見直しの動向

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15年度の国の財務書類が公表された

 26日に財務省が15年度の国の財務書類をサイトで公表している。27日の日経は「国の貸借対照表、債務超過245兆円――2003年度」として、債務超過が一般会計、特別会計合わせて245兆円となり、14年度より3兆円増えたと報じている。財政制度等審議会の小委員会の水口弘一座長は「民間企業であればつぶれている。橋や道路など売るのが難しい資産があるので財政の実態はもっと悪い」との考えを示したとか

 しかし、将来の担税力を担保にした借金が資産より多いことをもって「債務超過」というのはおかしな話だし、損益がない世界なのに損益のために存在する「民間企業であれば」という発想も奇妙だ。
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自治体の財政状況説明の必要性とからめた議論

 9月20日付け日本経済新聞朝刊14面に「特集――公会計改革会議2005、公募債の発行増やす自治体的確な情報公開必要性増す」の記事。
 記事は、自治体が地域経営を進めるうえで、公会計の重要性が一層高まっているとして、その理由を、地方銀行など関係の深い金融機関中心の調達から、公募債発行による金融市場からの直接調達への流れが加速しており、これまで以上に的確な財務情報を公開して、投資家からの信認を得る必要があるためだと説く。記事は、総務省が発表した18年度地方財政計画によると、地方債の引受先のなかでも郵便貯金など公的資金や、銀行等引受債(縁故債)などは減少する一方で、市場から直接調達する市場公募債の発行額は唯一、前年度より増加する見通しであるとし、市場公募債は銀行など金融機関が引き受けた後は市場で自由に売買されるが、発行量が増えれば投資家による選別が進みそうだと説き、実際に流通市場では地方債を発行する自治体の格付けの格差などから、例えば東京都債と大阪府債の国債に対する利回り格差(スプレッド)は2倍近くに広がっていると指摘する。そして、市場公募債を順調に消化するため、自治体は最近、投資家向け広報(IR)に熱心だが、「自治体の公表する財務諸表などは企業会計と異なり、実態が把握しにくい部分がある」(証券アナリスト)との指摘もあり、投資家に財政状況をわかりやすく詳細に提示する必要があると説く。そこまではいいのだが、締めの文句は、東京都が8月末に、行政の特質を反映した複式簿記・発生主義会計に基づく「東京都会計基準」を作成したことを取り上げ、自治体は投資家の目を意識した会計の改革が求められており、こうした動きが今後広がりそうだとしている。

 東京都が作成する複式簿記・発生主義会計に基づく財務諸表も損益表示と無縁である以上、企業会計とは異なるわけで、そこのところを勉強してから論じてほしいものだ。
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東京都が複式簿記の会計基準を策定したらしい

 8月29日付け日本経済新聞夕刊の「都、民間並み財務諸表――日々の収支反映、独自会計基準を策定」によると、東京都は、民間企業並みの財務諸表を作成するための独自の会計基準を策定したとのこと。国内の行政機関の会計制度で初めて、複式簿記で発生主義による基準を設けたということらしい。

 記事は、「これまでの行政機関の会計制度と比べ、道路など社会資本の資産価値や減価償却費などの財務データを正確に把握できる。」とするが、「正確に」というのは誤り。期間損益計算のための期間費用算出上必要とされる減価償却費を算出することにしたというだけであり、そもそも社会資本の期間費用を算出する必要など存在しない。むしろ、必要なのは適正維持費だろう。

 記事は続けて「都政の効率的な運営につなげる狙い」としているが、企業会計を採用している組織が、東京都交通局も含めて効率的な運営の役に立っているとでも言うのだろうか。

 記事によれば「都は18年度から新会計基準に基づき、日々の収入と支出を仕訳する。決算時には民間企業の損益計算書に相当する「行政コスト計算書」、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を作成。毎年9月の都議会で従来の決算資料と同時発表する。」ということのようだが、記事が「新会計基準の導入後は、これまで未公表だった職員の退職給付引当金や社会資本の減価償却費などが明らかになる。行政機関の「経営状態」を把握しやすくなり、民間企業と同様の経営分析が可能になる。」としているのは誤り。民間企業の経営分析のターゲットは売上高と利益であり、行政機関にとって、それはどちらも無縁のものだ。

 記事が「国内の自治体の多くは総務省のマニュアルに基づいて普通会計決算の数値を転用した財務諸表を作成しているが、都のように日々の収支を反映した会計制度は初めて。」というのは正しいだろう。その人的資源に、こういうコストの掛かる試みをするゆとりのある組織は東京都くらいだ。

東京都の公表文:「東京都会計基準」策定

 東京都の公表文では、さすがに「民間企業と同様な経営分析が可能となる」という馬鹿げた説明はない。優秀な人的資源を抱えているだけのことはある。
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国のバランスシートから国の財務書類へ

 6月23日付け日経金融新聞10面に「政策実現コスト公表――財務省、国の財務諸表拡充、今秋から」の記事。
 記事は、財務省が今秋から国の財務諸表を拡充し、これまでは国と特殊法人などの貸借対照表(バランスシート)だけを公表してきたが、今後は政策実現にかかった費用を示す計算書や民間会計のキャッシュフロー(現金収支)計算書にあたる資料の公表も始めると報じる。国の財務情報の公開を強化し、財政運営の透明性を高めるのが狙いとか。財務省は10年度分から国のバランスシートの作成を始め、今秋は15年度分を公表する予定だが、今回はバランスシートに加え、新たに「業務費用計算書」「資産・負債差額増減計算書」「区分別収支計算書」の3種類の財務諸表を作成し、「国の財務書類」として一括して公表するとか。業務費用計算書では人件費、減価償却費、補助金など政策実現にかかったコストを開示し、資産・負債差額増減計算書では、「純資産」が前年度比どのくらい増減したかを明らかにし、区分別収支計算書では税収などから人件費、補助金などの支出を差し引いた「業務収支」、国債発行や借入金で、どれだけ現金が入ったかを示す「財務収支」を明らかにするとのこと。
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主計局が庁費一元化を認める方向のよう

 読売は6月16日3時3分に「予算要求方法を一部是正、財務省が「共通経費」導入へ」を配信。
 記事は、財務省が15日、政策別に縦割りになっている予算の要求方法の一部を改め、省庁ごとに一括して要求する「共通経費」を導入する方針を明らかにしたと報じる。18年度予算から実施するとのこと。現在は政策ごとに「電話を何回かけるか」「どのぐらい電気代を使うか」などを想定して予算要求しているが、役所の電話や照明などは政策ごとに使い分けられているわけでなく、要求方法が現実離れしているとの指摘があり、財務省は、通信費、光熱費、備品費、印刷費、会議費、タクシー代、出張旅費などを「共通経費」とし、各省庁単位で一括要求することを認めることにしたと記事は伝える。また、「実際に行われていない行事」や「存在しない研究会」などの名目で予算要求が繰り返されたケースが相次いでいる背景に、現実的な積算に基づかずに通信費や出張旅費を要求してきた長年の慣行があるとの見方もあり、財務省は各省庁に、「何年も執行されていない事業」や「名目と違う事業」などの不適正な要求がないか、過去3年分の総点検を文書で要請し、要求方法の改革と合わせて不透明な予算要求の一掃につなげたい考えと記事は伝える。

 政策別予算編成とどう整合させるのか興味津々。
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財務省の方針は財務状態の表示における発生主義の採用

 4月27日の参議院決算委員会で興味深いやり取りがあった。
 国の会計を変えていくことについて、複式簿記化、発生主義化、連結化が必要とする委員の質問に対する財務大臣の答弁は、まず、「確かに明治二十二年までは複式簿記を日本も採用していたと。その後、現金主義単式簿記に改めたというにはそれなりの理由もあったんだろうと思います」とした上で、発生主義は期間損益の把握のために必要とされるものであって、公活動のために必要な租税の徴収額とその配分のための国の予算は性格が異なること、しかし、事業コストの把握や資産・負債の把握のためには有用なので、その限りでは発生主義の考え方を活用すること、そのような考え方から国の財務書類を検討・作成していることを述べている。
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政策評価の施策とと予算書の科目構成を同一にする動き

 読売は6月3日3時9分に「予算書と事業名統一、政策評価に新指針…総務省策定へ」を配信し、総務省が2日の自民党総務部会で、各省庁の施策や事業を事前・事後に点検する政策評価制度について、政策評価調書と予算書、決算書の事業名を統一することを柱にした見直し案を正式に提示したと報じる。事業の評価を確実に予算に反映させ、税金の無駄遣いをなくす狙いがあるとのこと。総務省は、これらの具体策を盛り込んだ新たな運用指針を年内に策定して18年度から実施することを目指していると記事は伝える。政策評価制度の見直しは、14年4月に施行された政策評価法が付則で3年後に運用状況の検討を求めたことに対応するもので、総務省は新指針に、〈1〉新規事業の事前評価と事後検証の積極的実施、〈2〉事業の達成目標の数値化などの明示、〈3〉各省庁の情報公開の徹底、などを盛り込む方針とか。

<参考>行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成十三年六月二十九日法律第八十六号)
附則
(検討)
第二条  政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
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財政審の「公会計に関する基本的考え方」

 平成15年6月30日に財政制度等審議会は「公会計に関する基本的考え方」について財務大臣へ答申した。これは、財政制度等審議会 財政制度分科会 法制・公会計部会がとりまとめたもので、次のような点をテイクノートする。
◎会計
 一般的に、経済主体の経済活動を貨幣額によって測定し、かつ、報告する行為

◇会計の機能
☆報告機能:経済主体外の投資家等に会計責任を明らかにする機能
☆管理機能:経済主体内の者の判断と意思決定を支える機能

◇公共部門の活動の特性
 定量的な評価にはなじみにくい分野も多く存在
 財政活動は、議会における予算議決を通じた事前統制の下に

◇企業会計の目的
☆株主に対する配当可能利益を確定し、関係者の利害調整を図るために企業の損益を合理的に計算すること
☆企業の経営成績や財政状態を把握し、その内容を株主や債権者等の外部利害関係者へ開示すること

☆企業内部で作成される予算や計画は、企業の内部管理を目的として、各種の予測や仮定を活用し、事前の経営上の意思決定や部門ごとの業績評価に用いられるもの←近年においては、このような企業における管理会計の重要性が認識されている

◇公会計の意義、目的
 公会計の意義、目的は、次の3点。
☆議会による財政活動の民主的統制
国の財政活動の基本は、国家により強制的に徴収された税を政策に基づき配分することである。このため、我が国の憲法においては、国会による財政統制に関する規定が厳格に定められている。予算を通じて事前の資金配分を明確にし、これを国会の議決による統制の下に置くこと、また、予算に基づく適正な執行を管理するとともに、その結果を決算として事後的に整理し国会へ報告することは、財政民主主義の観点から不可欠である。
☆財政状況等に関する情報開示と説明責任の履行
行政活動の多様化や厳しい財政状況等を背景として、行政府が、税財源の使用状況や資産・負債の状況を分かりやすく開示し、説明責任を果たす必要性が高まっている。
 この場合、行政府による説明責任の履行は、統制の裏返しとして資源管理の改善を促す側面がある点が重要である。また、情報の開示に当たっては、誰に対する説明責任であるのかという視点が意味のある開示を行う上で重要であり、国の財政状況について、議会に対する報告義務を果たすとともに、広く国民に対する情報開示と説明責任を果たすことが必要である。また、開示する情報によっては、将来世代の国民や市場関係者をもその対象に含み得ることに留意する必要がある。
☆財政活動効率化・適正化のための財務情報
財政活動を効率化・適正化していくためには、財務情報の充実を図り、その活用を進めることが重要である。ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)の考え方においても、費用や便益に関する客観的な情報を活用して歳出の合理化を進めるとともに、予算編成のプロセスにおいて、事業の将来コストや予算の執行実績の状況を的確に把握し、それを予算の編成にフィードバックすることが重要となっている。
 他方、この場合、財務情報の具体的な活用手法については、公共部門の活動は、必ずしも定量的な評価になじむ訳ではなく、また、財務情報をどのように評価するかという問題もあるため、より実効性のある事後評価手法の確立を含め、十分な検討が必要となると考えられる。

◇公会計の扱う財務情報
☆議会の議決対象となる予算及びそれに対応して議会に報告される決算←「議会による民主的統制」
☆財務報告としての財務書類等←「情報開示と説明責任の履行」及び「財政活動の効率化・適正化」
 「財務報告として作成される財務情報を、単に情報開示と説明責任の履行にとどめることなく、予算の効率化・適正化にいかに活用し、聖域なき歳出改革につなげていくかが重要であることを指摘したい。 」


 
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