単式簿記と複式簿記

 複式簿記は財産の保全管理と資金収支を同時に処理できるが、単式簿記はできない。だから、現金主義の現在の公会計では借金の管理が杜撰になって財政が破綻したんだ、という議論があるようですが、これは誤りです。

 複式簿記と単式簿記の実務面での差異は仕訳の有無です。単式簿記の場合にも、例えば、物品を購入した場合には、物品の増と資金の減がそれぞれの同時に記録されることになります。公会計の場合には、支払を検収の後に行うのが原則で、納品された物品の検収を行った物品係が、物品管理簿等に記帳するとともに、検収調書を収支係に回し、これに基づいて支払が行われますから、手続上、同時性が確保されることになります。この辺りの感覚は、公会計に生きている人でないと理解しにくいかもしれませんが、要するに、単式簿記の場合にも、財産管理と資金収支管理は並行処理しているということです。

 では、仕訳の有無によって何が異なってくるのか。それは減価償却です。複式簿記の場合は、決算整理として減価償却が仕訳処理されますが、単式簿記では減価償却を予定していません。あるのは、評価替えだけです。それは、つまり、減価償却が期間損益算定のための費用分散技法だからであり、期間損益計算を前提としない単式簿記では必要ないからです。
 更に言うと、期間損益計算を必要としない会計であれば複式簿記の必要はない、ということでもあります。

(2003/10/31記)
© 2003 massim


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