●企業会計には解散価値を重視する立場と繰延資産を重視する立場があるという面白い着眼だったが、内容が薄いために絶版(2003/10/31)

企業会計

 企業会計というのは、その出自からして二つの考え方から成り立っています。一つは、「今、清算すれば」の観点、今一つは「今後も活動するためには」の観点。前者は解散価値、後者はの考え方です。複式簿記成立の当初、地中海貿易の一航海一会計は前者の典型であり、江戸時代の大福帳は後者でしょう。

 現在の企業会計の中心的な考え方は、米国の株式取引中心の考え方です。それは、会計が表現すべきものは株式価値であり、財務諸表は円滑な株式取引に役立つべきである、という考え方です。

 この考え方にたてば、B/Sは、株式の価値、すなわち株価の裏付けとなるはずの、その時点での純資産を表現すべきであるということになります。したがって、当然に時価主義が要請されます。また、P/Lは配当利回りからの株価算定を行うために配当可能性を算出するためのものという位置付けになります。

 このような考え方の背後には、 going-concern の考え方では都合が悪い人々、つまり短期間に株価を吊り上げてストックオプションを行使して次の会社に移ることを人生の最大の目標とする人々の存在があります。

 時価主義に対立する考え方は、結局、原出資者の財産保全と通時的業績比較を重視する考え方といえるでしょう。

 問題は、公会計においては、どちらの考え方が馴染むのか、ということです。単純に考えると、 going-concern のようにも思えます。しかし、これは税収とリンクする純粋公会計については当てはまりますが、企業会計的表示が馴染む、出資団体など税収とのリンクが切れている又は薄い会計の場合には、リンクが薄いものとして設置している趣旨から言えば、原出資者であっても、その財産保全ではなく、清算価値をウォッチすることが望まれます。

(2003/8/16記)
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