歳入歳出決算とキャッシュフロー計算書

 公会計への複式簿記導入論には、「歳入歳出決算では財務状況が分からない」という言説を見掛けることがあります。これは、「キャッシュフロー計算書では財務状況が分からない」と言っているようなもので当たり前の話です。

 では、なぜそのような愚かしい言説が出てくるのか。
 それは、公会計と企業会計における「決算の承認」の意味が大きく異なっていることを理解していないためです。
 企業会計の決算の承認とは、利益処分案の承認にほかなりません。期末の財務状況と期間損益計算を元に、どの程度の配当が合理的か、承認を受けるわけです。
 しかし、公会計における決算の承認は、全く意味が異なります。それは、議決された予算の執行結果の報告の承認です。予算の議決とは、執行所要額とそれに見合う租税徴収の承認であり、それは現金の収支額として行う必要があります。その結果の報告も当然に現金収支額です。
 つまり、歳入歳出決算は、もともと財務状況の報告のためにあるわけではないのです。財務状況の報告のためには、別に報告書が用意されています。国であれば、国有財産増減及び現在額計算書、債権管理総計算書、国の債務に関する計算書など、決算の添付書類として膨大な資料が提出されます。この報告書群によって財務状況を知ることができるわけであり、だからこそ、試作品とはいえ、国の貸借対照表も複式簿記の導入を待たずして作成することができたわけです。

(2003/10/27記)
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