B/Sにおける資本の概念

 B/Sでは、資産と負債の差額として資本の額がある。負債と資本の本質的な差異は、負債が弁済すべきものであるのに対して、資本は結果的に増減するものであるという点である。そして、債務額は増減を前提としないのに対し、資本のうち資本金は増減(増資・減資)の対象である。
 この見地に立てば、例えば、債権放棄を受けた企業の会計処理は、実務はともかく、理屈の上では、放棄に見合う債務の額を資本金に振り替えた後に減資することになる。

 企業会計の場合には、B/Sの資本は、出資者持分を表す。その額は、当該企業又は出資者持分が譲渡対象となっている場合には、その時点での企業価値を示す。

 では、公会計(公共事業体及び公企業を除く。)の財政状況をB/Sで表示した場合、資産と負債の差額として計上される資本は、何を意味しているのか。それは、端的に資産超過額又は負債超過額であり、それ以上の何も示していないと言うべきだろう。むしろ、企業会計の比喩で資本として表示すること自体が誤りであり、その誤りの上に立って、その性格を論ずることは空しい営みと評さざるを得ない。

(2003/8/26記)

© 2003 massim


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