公会計の概念

 財政制度等審議会が15年6月30日に財務大臣へ提出した法制・公会計部会の「公会計に関する基本的考え方」(公会計基本小委員会作成)では、「はじめに」で「公会計」を「公共部門の会計制度」と定義し、「2.公会計の意義・目的」で、会計については、「会計とは、一般的に、経済主体の経済活動を貨幣額によって測定し、かつ、報告する行為であり、その機能としては、経済主体外の投資家等に会計責任を明らかにする「報告機能」と経済主体内の者の判断と意思決定を支える「管理機能」とがある」と述べ、また、公共部門の経済主体については、「民間企業では行い得ない公共の福祉の向上等を目的とし、税収を根源的な財源として市場性のないいわゆる公共財の提供等を行っている。このため、公共部門の活動は、定量的な評価にはなじみにくい分野も多く存在しており、その財政活動は、議会における予算議決を通じた事前統制の下に置かれている」としている。

 そして、「公会計の扱う財務情報」を「議会の議決対象となる予算及びそれに対応して議会に報告される決算」と「財務報告としての財務書類等」との二つに分けた上で、前者の直接の目的は「議会による民主的統制」であるとし、後者は「情報開示と説明責任の履行」及び「財政活動の効率化・適正化」の機能を果たすとしている。そして、議会による民主的統制を予算による事前統制としている現行制度は(憲法論議に立ち入ることから)変更しないことを前提とし、と「財政活動の効率化・適正化」の充実のために財務報告の充実が求められている、という議論を、それらが「議会による民主的統制」とどのような関係にあるかは触れずに展開している。

 しかし、「情報開示と説明責任の履行」が「議会に報告される決算」と別なものとして議論されるというのは奇妙な話である。

 本来、税金の使途を明確にして所要額を徴税する必要性を示し、最高機関が歳出権限を付与する方法として予算が存在する。公会計とは、公権力の最高機関である議会が議決した予算と議会及び議会から授権された各機関が定める財政法、税法等の法令を処理規範とする公権力の会計である。そして、公会計の報告として決算が存在する。

 現在、日本国の議会は、公会計について、予算に対応して報告される歳入歳出決算だけでなく「国有財産増減及び現在額総計算書」も審査対象とし、「一般会計国の債務に関する計算書」等も歳入歳出決算の添付書類として提出を求めている。このような財務報告を歳入歳出決算の添付書類などとして提出を求めている議会の立場からすれば、財務報告が決算と離れて存在することはあり得ず、決算と離れて公会計の「情報開示と説明責任の履行」が存在することは許されないはずである。決算とは別なものとして財務報告の存在が許されるとすれば、それは、議会に対して会計責任を明らかにする公会計の報告としてではなく、「財政活動の効率化」の判断と意思決定を支える情報としてであろう。それは、バジェット・サイクル上は、所要額に係るものとして認識されるはずである。

(2003/8/12記)

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